走れ!タカハシのブログ

本の感想についてのブログ

「天才ラヴロックの発想が生む 逆転の知恵」糸川英夫

イギリスの異端の科学者ラヴロックのガイア仮説をひもとき、そこから何を学ぶべきか解いた本。私は原子力発電所はできる限り廃炉すべきとの立場でラヴロックの原子力は安全だとの主張とは正反対なのだが、彼の論文には理工学部にいた頃から興味津々であった。まず全てを疑い、直感からコツコツ積み上げる大切さを学んだ。セックスがどうしてあるのか、を論じたのは意外だ。知的好奇心を刺激され、理系であることに誇りを感じられた一冊。


「饗宴」プラトン

再読。うーん、難しいんですけど…。金持ちはより金持ちになる話が面白かった。哲学というより戯曲として教訓を読み取るべきなのか。むつかしい。また哲学から離れそうになった。


饗宴 (岩波文庫)

饗宴 (岩波文庫)

「星の王子さま」サン=テグジュペリ

子供のころこれを毛嫌いしていた。大人になり読むとまた違うのかと思い再読。全く違った。傷ついた大人には染み入るだろう。大人にしかわからない隠されたギミックに虚をつかれた思いだ。だからこれを子供に安易にすすめるのはいかがなものかと思う。子供はわからないことに拒否反応を示す。たいていの子供はこれを嫌うだろう。わからないからだ。そして大人になって読まなくなる可能性が高くなる。子供に読ませるなとは言わない。それぞれの子供の趣向を無視してその子供に何が必要か考えず安易にこれを押しつけるのに疑問を呈したいだけだ。


星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

「クレヨン王国の十二か月」福永令三

初めて読んだ小説が確かこれだ。懐かしく思いまた読んだ。やっぱり面白かった。そしてファンタジーは普遍性があるのだなと思った。ここでは大自然さえもパステルカラーでポップでラブリーな世界観に取り込まれる。酒屋や郵便局まで出てきて現実世界との融合も発想がユニークだ。しかし、「精霊の守り人」「ハリーポッター」のような大人にも読めるファンタジーに慣れた身としては、少し退屈に思えたのも確かだ。あくまで子供向けだ。子供にしかわからない何かがある。


クレヨン王国の十二か月 (講談社青い鳥文庫)

クレヨン王国の十二か月 (講談社青い鳥文庫)


「マリカの永い夜/バリ夢日記」吉本ばなな

前半が小説で後半が旅行記という変わった構成。「マリカの永い夜」は多重人格者と医師がバリを旅する小説だが、多重人格者マリカ(オレンジ)を作家の偏見で異常とする風潮に静かに、本当に静かに逆らい医師はマリカ(オレンジ)と「普通」に接していく。他者を尊重しようとする人間の崇高さとバリの美しい描写が実に良い。既存の文学への挑戦に思える。「バリ夢日記」はひたすらうらやましい。


マリカの永い夜;バリ夢日記

マリカの永い夜;バリ夢日記

「日々のこと」吉本ばなな

なんて飾らないタイトルなんだ。まんまじゃん!と突っ込みながら読んだのだが、ささいな日常からいろんなことを拾ってくのが得意な人だ。ばなな自身は何しているのかというと、ただ遊んでいるだけ。それだけでこんなに面白く味わい深いエッセイになるとは。執筆に関して一切書かれてないのにも好感を持った。てかこの人小説よりエッセイの方が面白いんじゃ…。


日々のこと

日々のこと

「カッパのぬけがら」なかがわちひろ

男の子がカッパになる話なのだが、話をふくらませるのがうまい。カッパが男の子に対して最後までふてぶてしい態度を取るところが良い。紙は全て青色で、水の中にいるようだ。でも実はバッドエンドなのだ。それを大げさに書かず、カッパの表情全てで哀愁を表現する力量にしびれた。その後を妄想するのも楽しい。


カッパのぬけがら (おはなしパレード)

カッパのぬけがら (おはなしパレード)