走れ!タカハシのブログ

本の感想についてのブログ

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえ

短編集。人間ってなんていやらしいんだ、と読んだ後思った。しばらくあとを引く。元祖イヤミスの才能が爆発だ。ここまで強烈で、逆に気に入った。表題作、「笑うセぇるすまん」でも子供に自分の夢を押し付け、子供を自分の身代わりであるようにする母親が出てきたが、この作品でも。そしてそんな単純な話でなく弓香のふるまいにも裏があった。背筋が寒いどころか体が熱くなる。「優しい人」と「マイディアレスト」の殺人の場面は鮮やかすぎて、湊の才能が怖い。「罪深き女」のミスリードにやられた!


ポイズンドーター・ホーリーマザー

ポイズンドーター・ホーリーマザー

「大切なきみ」マックス・ルケード

教訓めいた話だが説教くさくない。ずいぶんあっさりしているのはアメリカの絵本だからか。作者が牧師と考えたら、ずいぶん意味深な話だ。特別なことは何も起こらない。子供が産みの親に会い「あなたは尊い」と向かい合い言われるだけだ。そこが考えさせられた。「向かい合う」というのがポイントか。


大切なきみ (フォレスト・ブックス)

大切なきみ (フォレスト・ブックス)

「ロボット創造学入門」広瀬茂男

ロボットの作り方を指南しているのではない。地雷ロボットができるまで、ロボットと社会との関わり、あと倫理にまで踏み込んでいる。確かにロボットを人間と同じく見なすのは人間のためにならない。そこはもともと私もそう思っていたので同意した。執着があったからこそ人間は生存できていた。あくまで機械で人間に似せる必要はない。ロボットが人間のような見た目になると本来の力を発揮できない、との指摘には目からウロコ。


ロボット創造学入門 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)

ロボット創造学入門 (岩波ジュニア新書 〈知の航海〉シリーズ)

「杖下に死す」北方謙三

北方謙三といえば憧れる読書家も多いのでは。私にとっても例外ではなく、葉巻をくゆらせ口の少ないたたずまいだけで他を圧倒するシブいオジサンといった感じで、気になっていた。そしてついにリサイクル図書でこれを見つけて読んだ。初めての時代小説だったのだが、読みやすい。大阪に縁のある私だから、大塩平八郎の乱のことは気になっていた。大塩平八郎は出てこない。剣を友にして生きる男の生きざまが淡々と書かれている。他に時代小説を読みたくなった。


杖下に死す

杖下に死す

「トリックスターから、空へ」太田光

爆笑問題太田光によるエッセイ。テレビやラジオでおどけたバカなボケを発揮している彼だが、その「おどけたバカ」がきちんとした理念に沿ったものだとわかる1冊。書かれていることは政治や平和のことがほとんどなので、退屈に思う人は思うだろう。日本への思いを感じた。自虐していて弱い、そんな国でいいじゃないか、とか、真の力とは人を殺さない力…と思える、そんな1冊。又吉だけでなく、表現に真摯なのは芸人に共通することなんじゃないかと思った。


トリックスターから、空へ

トリックスターから、空へ

「ONE PIECE」1 尾田栄一郎

単行本を集めていたのだが、全部売ってしまってどこまで集めたのかわからなくなってしまい、読み直し。小さなルフィはどこかまだのんきでかわいい。出会いを大切にする男の子なのだなと思う。ヤクザ映画に影響を受けていることは作者も公言している。男の任侠道みたいなものもさりげなく伝わってくる。ふと、三島由紀夫寺山修司がもし生きててこの作品を読んだなら気に入るだろうなと思った。ゾロなんていかにも彼ら好みだ。なので超国民的マンガなのにアングラ的でさえある。


ONE PIECE  1 (ジャンプ・コミックス)

ONE PIECE 1 (ジャンプ・コミックス)

「落葉 他12篇」G・ガルシア=マルケス

表題作以外は短編。全体的に心地よい静寂に包まれている。悲壮感に浸った。その中でも鬱屈した孤独を感じるところがあって、静かに胸に来た。しかし日本では著作がバラバラに出版されててややこしいですね。


落葉 他12篇

落葉 他12篇