走れ!タカハシのブログ

本の感想についてのブログ

「星の王子さま」サン=テグジュペリ

子供のころこれを毛嫌いしていた。大人になり読むとまた違うのかと思い再読。全く違った。傷ついた大人には染み入るだろう。大人にしかわからない隠されたギミックに虚をつかれた思いだ。だからこれを子供に安易にすすめるのはいかがなものかと思う。子供はわからないことに拒否反応を示す。たいていの子供はこれを嫌うだろう。わからないからだ。そして大人になって読まなくなる可能性が高くなる。子供に読ませるなとは言わない。それぞれの子供の趣向を無視してその子供に何が必要か考えず安易にこれを押しつけるのに疑問を呈したいだけだ。


星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

「クレヨン王国の十二か月」福永令三

初めて読んだ小説が確かこれだ。懐かしく思いまた読んだ。やっぱり面白かった。そしてファンタジーは普遍性があるのだなと思った。ここでは大自然さえもパステルカラーでポップでラブリーな世界観に取り込まれる。酒屋や郵便局まで出てきて現実世界との融合も発想がユニークだ。しかし、「精霊の守り人」「ハリーポッター」のような大人にも読めるファンタジーに慣れた身としては、少し退屈に思えたのも確かだ。あくまで子供向けだ。子供にしかわからない何かがある。


クレヨン王国の十二か月 (講談社青い鳥文庫)

クレヨン王国の十二か月 (講談社青い鳥文庫)


「マリカの永い夜/バリ夢日記」吉本ばなな

前半が小説で後半が旅行記という変わった構成。「マリカの永い夜」は多重人格者と医師がバリを旅する小説だが、多重人格者マリカ(オレンジ)を作家の偏見で異常とする風潮に静かに、本当に静かに逆らい医師はマリカ(オレンジ)と「普通」に接していく。他者を尊重しようとする人間の崇高さとバリの美しい描写が実に良い。既存の文学への挑戦に思える。「バリ夢日記」はひたすらうらやましい。


マリカの永い夜;バリ夢日記

マリカの永い夜;バリ夢日記

「日々のこと」吉本ばなな

なんて飾らないタイトルなんだ。まんまじゃん!と突っ込みながら読んだのだが、ささいな日常からいろんなことを拾ってくのが得意な人だ。ばなな自身は何しているのかというと、ただ遊んでいるだけ。それだけでこんなに面白く味わい深いエッセイになるとは。執筆に関して一切書かれてないのにも好感を持った。てかこの人小説よりエッセイの方が面白いんじゃ…。


日々のこと

日々のこと

「カッパのぬけがら」なかがわちひろ

男の子がカッパになる話なのだが、話をふくらませるのがうまい。カッパが男の子に対して最後までふてぶてしい態度を取るところが良い。紙は全て青色で、水の中にいるようだ。でも実はバッドエンドなのだ。それを大げさに書かず、カッパの表情全てで哀愁を表現する力量にしびれた。その後を妄想するのも楽しい。


カッパのぬけがら (おはなしパレード)

カッパのぬけがら (おはなしパレード)

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえ

短編集。人間ってなんていやらしいんだ、と読んだ後思った。しばらくあとを引く。元祖イヤミスの才能が爆発だ。ここまで強烈で、逆に気に入った。表題作、「笑うセぇるすまん」でも子供に自分の夢を押し付け、子供を自分の身代わりであるようにする母親が出てきたが、この作品でも。そしてそんな単純な話でなく弓香のふるまいにも裏があった。背筋が寒いどころか体が熱くなる。「優しい人」と「マイディアレスト」の殺人の場面は鮮やかすぎて、湊の才能が怖い。「罪深き女」のミスリードにやられた!


ポイズンドーター・ホーリーマザー

ポイズンドーター・ホーリーマザー

「大切なきみ」マックス・ルケード

教訓めいた話だが説教くさくない。ずいぶんあっさりしているのはアメリカの絵本だからか。作者が牧師と考えたら、ずいぶん意味深な話だ。特別なことは何も起こらない。子供が産みの親に会い「あなたは尊い」と向かい合い言われるだけだ。そこが考えさせられた。「向かい合う」というのがポイントか。


大切なきみ (フォレスト・ブックス)

大切なきみ (フォレスト・ブックス)