走れ!タカハシのブログ

本の感想についてのブログ

「ためらい」ジャン=フィリップ・トゥーサン

ミニマリズムと呼ばれるだけあって、余計な情報や装飾がなくてすごく読みやすい。そのそっけなさもフランスならではかな。ためらい作者: ジャン・フィリップトゥーサン,Jean Philippe Toussaint,野崎歓出版社/メーカー: 集英社発売日: 1992/12メディア: 単行…

「葬儀」ジャン・ジュネ

恋する相手がヒトラーだったり敵対国だったりして、文学の持つ変幻自在さを堪能した。とにかく性描写が多いのだが、くどくなく、いやらしくない。淫靡な雰囲気はない。「O嬢の物語」のときも思ったが、そこがフランスの持つ「それが、どうしたの?」精神に通…

「ワールドトリガー」3 葦原大介

バトルっちゃバトルだが派手なアクションとかはナシ。頭脳戦だなぁ。頭をビンビン刺激される感じ。知的な匂いもする。絵の線がかっちりしてるしジャンプで1番クールなマンガだった。ワールドトリガー 3 (ジャンプコミックス)作者: 葦原大介出版社/メーカー: …

「JOY」山川健一

なんておしゃれな小説なんだ。生活感のあるおしゃれさというか。もうこの作中ではそこら辺に転がってるものみんなおしゃれだ。文章の持つ魔法だな。独自性バツグン、既視感ゼロ。うーん、こんな小説家になりたいものである。本人の経歴をWikipediaで見たら、…

「木はえらい イギリス子ども詩集」

イギリス子ども詩集と言っているが、イギリスの大人が書いた詩集である。イギリスの詩の世界ではニューウェーブらしい。無邪気でバカっぽくて楽しくてやんちゃな詩が私好みだった。しかし詩集ってすぐ読めますね。これからは詩集ばっか読むかも。木はえらい―…

「科学者は戦争で何をしたか」益川敏英

素粒子論で有名なノーベル賞受賞者益川敏英さんによる本。九条科学者の会があるとは知らなかった。科学がいかに戦争に悪用され、発明は戦争と関係あったのかどうか、作者自身の平和論、原子力についてが書かれている。戦争反対でありながら生命科学科卒かつ…

「暗殺教室」5 松井優征

毎度毎度このマンガは勉強になる。どんな職業や立場であれ、人生において使えること、大切なことを学べる。今回は、生徒の暗殺のサポートをするクールで愛情のなさそうに見える烏間から、その烏間の同期の鷹岡に教官が代わるのだが、この鷹岡が家族の愛情と…

「ワンピース」2 尾田栄一郎

ナミ登場で、ちゃっかり大活躍。お金とみかんが好きなお茶目な女泥棒ってかわいすぎる。もう本当にかわいい。海賊をうらむ真の理由はまだ明かされず。ゾロが本当にかっこいい。あと「弱者への暴力反対」というワンピースの思想が一貫している。今の子供にも…

「わたしのワンピース」にしまきかやこ

すごいものを見てしまったって、感じだ。既視感ゼロ。いやはやとんでもなく素敵でかわいい。わたしのワンピース作者: にしまきかやこ出版社/メーカー: こぐま社発売日: 1969/12/01メディア: 大型本購入: 7人 クリック: 64回この商品を含むブログ (125件) を…

「透明な沈黙」

標本の骨に色をつけて発表するアーティストとヴィトゲンシュタインの言葉のコラボ作品。ヴィトゲンシュタインの大ブルジョワに生まれながらの苦悩が気になった。どこまでも自分というものを考えたのは、ニーチェとは対局にあったのかもしれない。ヴィトゲン…

「ウヒョッとびっくり ゆうれい話」木暮正夫

もう、原ゆたかの絵おもしろすぎるんですけど。だからもう大人になったし、あんまり怖くなかった。いちいち絵が笑える。表情がツボ。小暮正夫さんはまだご存命なのだろうか。ウヒョッとびっくり ゆうれい話 (日本のおばけ話・わらい話17)作者: 木暮正夫,原ゆ…

「ビタミンF」重松清

直木賞受賞作品。これで重松清は注目された感じだったなぁ。私は中学のとき読んだ「ナイフ」が初めてだけど。ユーモアがあって心温まる話だけど、オチがついてない感じが微妙だな。他の重松清の作品の方が直木賞にふさわしいのあるんだけどな。直木賞選考基…

「ビフォア ラン」重松清

重松清の小説デビュー作。広島と思われる県にある進学校の生徒で「病気」で退学したまゆみと、彼女の同級生の3人組男子、その男子のうちのひとり優のガールフレンドである紀子の交流を描いた長編。高校のころは私もかなり傷つき悩んでいたように思うから昔の…

「ほんとうの空色」バラージュ

マルチ芸術家の先駆けのようなバラージュによる児童文学。ハンガリーの貧しい少年が奇跡を起こす。学校での場面なんか、あぁこういうことになるよなぁと妙に日本人でもリアルに感じた。奇跡といっても大げさなものではない。それでもフェルコーの心が温まっ…

「天才ラヴロックの発想が生む 逆転の知恵」糸川英夫

イギリスの異端の科学者ラヴロックのガイア仮説をひもとき、そこから何を学ぶべきか解いた本。私は原子力発電所はできる限り廃炉すべきとの立場でラヴロックの原子力は安全だとの主張とは正反対なのだが、彼の論文には理工学部にいた頃から興味津々であった…

「饗宴」プラトン

再読。うーん、難しいんですけど…。金持ちはより金持ちになる話が面白かった。哲学というより戯曲として教訓を読み取るべきなのか。むつかしい。また哲学から離れそうになった。饗宴 (岩波文庫)作者: プラトン,久保勉出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/…

「星の王子さま」サン=テグジュペリ

子供のころこれを毛嫌いしていた。大人になり読むとまた違うのかと思い再読。全く違った。傷ついた大人には染み入るだろう。大人にしかわからない隠されたギミックに虚をつかれた思いだ。だからこれを子供に安易にすすめるのはいかがなものかと思う。子供は…

「クレヨン王国の十二か月」福永令三

初めて読んだ小説が確かこれだ。懐かしく思いまた読んだ。やっぱり面白かった。そしてファンタジーは普遍性があるのだなと思った。ここでは大自然さえもパステルカラーでポップでラブリーな世界観に取り込まれる。酒屋や郵便局まで出てきて現実世界との融合…

「マリカの永い夜/バリ夢日記」吉本ばなな

前半が小説で後半が旅行記という変わった構成。「マリカの永い夜」は多重人格者と医師がバリを旅する小説だが、多重人格者マリカ(オレンジ)を作家の偏見で異常とする風潮に静かに、本当に静かに逆らい医師はマリカ(オレンジ)と「普通」に接していく。他者を…

「日々のこと」吉本ばなな

なんて飾らないタイトルなんだ。まんまじゃん!と突っ込みながら読んだのだが、ささいな日常からいろんなことを拾ってくのが得意な人だ。ばなな自身は何しているのかというと、ただ遊んでいるだけ。それだけでこんなに面白く味わい深いエッセイになるとは。…

「カッパのぬけがら」なかがわちひろ

男の子がカッパになる話なのだが、話をふくらませるのがうまい。カッパが男の子に対して最後までふてぶてしい態度を取るところが良い。紙は全て青色で、水の中にいるようだ。でも実はバッドエンドなのだ。それを大げさに書かず、カッパの表情全てで哀愁を表…

「ポイズンドーター・ホーリーマザー」湊かなえ

短編集。人間ってなんていやらしいんだ、と読んだ後思った。しばらくあとを引く。元祖イヤミスの才能が爆発だ。ここまで強烈で、逆に気に入った。表題作、「笑うセぇるすまん」でも子供に自分の夢を押し付け、子供を自分の身代わりであるようにする母親が出…

「大切なきみ」マックス・ルケード

教訓めいた話だが説教くさくない。ずいぶんあっさりしているのはアメリカの絵本だからか。作者が牧師と考えたら、ずいぶん意味深な話だ。特別なことは何も起こらない。子供が産みの親に会い「あなたは尊い」と向かい合い言われるだけだ。そこが考えさせられ…

「ロボット創造学入門」広瀬茂男

ロボットの作り方を指南しているのではない。地雷ロボットができるまで、ロボットと社会との関わり、あと倫理にまで踏み込んでいる。確かにロボットを人間と同じく見なすのは人間のためにならない。そこはもともと私もそう思っていたので同意した。執着があ…

「杖下に死す」北方謙三

北方謙三といえば憧れる読書家も多いのでは。私にとっても例外ではなく、葉巻をくゆらせ口の少ないたたずまいだけで他を圧倒するシブいオジサンといった感じで、気になっていた。そしてついにリサイクル図書でこれを見つけて読んだ。初めての時代小説だった…

「トリックスターから、空へ」太田光

爆笑問題の太田光によるエッセイ。テレビやラジオでおどけたバカなボケを発揮している彼だが、その「おどけたバカ」がきちんとした理念に沿ったものだとわかる1冊。書かれていることは政治や平和のことがほとんどなので、退屈に思う人は思うだろう。日本への…

「ONE PIECE」1 尾田栄一郎

単行本を集めていたのだが、全部売ってしまってどこまで集めたのかわからなくなってしまい、読み直し。小さなルフィはどこかまだのんきでかわいい。出会いを大切にする男の子なのだなと思う。ヤクザ映画に影響を受けていることは作者も公言している。男の任…

「落葉 他12篇」G・ガルシア=マルケス

表題作以外は短編。全体的に心地よい静寂に包まれている。悲壮感に浸った。その中でも鬱屈した孤独を感じるところがあって、静かに胸に来た。しかし日本では著作がバラバラに出版されててややこしいですね。落葉 他12篇作者: ガブリエル・ガルシア=マルケス,…

「夜は終わらない」星野智幸

前半で読むのをやめたままずっと放置してた。前半のクオンがレオナに語る物語があまりにもつまらなくてどこかで聞いたことがあるような感じがしたからだ。しかし今日になって「もしかしてつまらないのは罠なのか…」と思い、今日になり他の本を挟みながら後半…

「明日ちゃんのセーラー服」1 博

この表紙は反則だろう。やられた!って感じだ。表紙がよくて中はダメなマンガは多いが、これはその期待を鮮やかに裏切り、むしろ中身の方がよかった。読んでる間、かわいさの洪水に溺れて身動きができなくなる。コマを使わない1枚絵も大胆で新しい試み。小さ…